恋人はトップアイドル
「えっ、と・・・、3日前?かな。いや厳密にはおとといか。深夜だったから。」

「深夜?お前な、まだ未成年なんだから下手なマネしてくれるなよ?」

優太はまだ18だ。深夜徘徊してる、とでも雑誌に載せられたら終わりだ。

「わかってるよ。ただ、コンビニ行こうとしてただけ。」

優太は口を尖らせ、反論する。

「そのコンビニの近くに、バーがあるんだ。行ったことはないけど、バーなのは知ってて。んで、コンビニで買い物して帰る途中に、バーから出てきた女の人を何気なく見て・・・。」

心臓が脈打っていた。まさか。

「それが、小夜姉だったんだ。」


そんな馬鹿な話、あるはずがない。


「お前見間違いだろ。」

「・・だから俺が、」

「小夜が、そんなトコで働くはずねえだろ・・!」

声が震えた。怒りか、困惑か、わからない。

「あいつは、幸せになったんだ。お前だって知ってるだろ。だから身を引いたんじゃねえのか。」

「・・それは、そうだよ。でももし本当に、小夜姉があそこで働いてたらどうするの?」

・・もし、本当に?
小夜が、深夜にそんな場所で働いてたら?


「俺が辞めさせる。」


ほかの誰でもない俺が。
小夜にそんなこと、させたら許さない。

「・・そう言うと思って、これ。」

すると、優太は一枚の紙を差し出した。見知らぬ単語の書かれたメモ。

「バーの名前。行ってみて。・・・俺が行くと、小夜姉困るだろうから。」

「・・優太。」

「じゃ、取材行ってくるね。」

優太は何ともなさ気に笑って、楽屋を出て行った。

あいつの気持ちが、まだ晴れていないのを何となく知ってはいた。でもこんな形で思い知るなんて----。

メモの文字を見つめた。
たった1週間前に再会したときは、笑っていた小夜。

「小夜・・・。」


お前は、本当にここにいるのか?


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