恋人はトップアイドル
「おい優美、どうなんだよ?」

健人がそんな声を私にかけた。しかしそれは耳から耳へ、すり抜けていく。
唖然とする中、でも目の前に突き付けられた現実に、ジワジワと喉の奥からせり上がってくる何かを感じた。


「優美・・?」

戸惑っているような百合の声で、私はようやく、自分が泣いていることに気がついた。

「まさか・・。」

「合・・格、したのか・・?」

そんな私の様子に二人も気がついたらしい。
私は手に持っている紙を、机の上に広げた。


その真っ白な紙の真ん中に、大きく書かれた「合格」の二文字。


まさか、泣くなんて思ってなかった。
そんなに思い入れを持って応募したわけじゃない。

ただ、会える、という事実が。
私にあと少し残された高校生活の中に、少しでも、素敵な思い出が出来るかもしれない、という予感が。


私の涙腺をおかしくさせる。




その文字を見れば見るほど、湧き出てくる信じられない気持ちと、会えるという実感。



テレビの外でしか見れなかった人に、

初めてこんなに惹かれた人に、

私は実際に会えるんだ。



輝に、会えるんだ。



「良かったねー!」

「泣くほどかよ・・。」

「健人、一言余計なのよアンタは!」


百合が自分の事のように喜んでくれる。健人も、呆れ顔だけど、微笑んでくれる。

この二人の協力がなければ、私は輝には会えない。


「二人とも・・よろしくお願いします。」

私は涙で濡れた頬を拭って、頭を下げた。


「いいよ、そんなん!」

「任しとけ。」


二人とも力強く、答えてくれる。
私はそんな二人に安心しつつ、何かが始まる予感に、逸る気持ちを抑えきれなかった。


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