恋人はトップアイドル
「じゃあ、君はやめたほうがいい。」

「で、でも・・!」


社長の言葉に、隣の女性は食い下がる。多分、Rと話したいんだ。

「スタッフが出来ないなら、Rとの接触はさせられない。ここは、ファン交流の場じゃないんでね。」

社長は依然、冷たい態度のままだ。

「スタッフをするのか、帰るのか、どちらかだ。」


でも、相当な覚悟が必要なんだ。
じゃなきゃ、出来ない、ってことなんだ。


ああ・・、生徒会長といい、これといい、最近私悪運拾ってんのかなぁ・・・。


大変なものを引き受けるつもりなんか微塵もないのに、なぜか結局大変になることが多い。


このスタッフも、ファン意識で応募したらこのザマだ。


でも・・、私のファン意識は、こんなことでは、なくならない。健人と百合にも応援してもらった分、ちゃんとやりたい。


私は・・、やっぱり輝に会いたい!


「私、やります。」


その気持ちのままに、私は唐突に声を上げた。
社長の厳しい視線が、私に移る。机を隔てて前に座っている4人の男性の視線も、私に向いた。

「・・本気か?」

「本気だし、覚悟もあります。やらせて下さい。」

「ファン意識じゃ、やれないぞ?」

「私のファン意識は相当なんで、それあってこそ、やり切れるって思います。」

毅然とした態度は崩さない。負けたくない。

せっかく、ここまで来たんだから。


「いいだろう。じゃあ今日から半年、よろしく。」


社長はようやく、ニッコリと微笑んだ。


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