恋人はトップアイドル
Ⅱ.Two Years ago─シンデレラ・ストーリー

本当のはじまり

ツアー初日まで、あと10日と迫ってきた。リハーサルは佳境に入り、段々とスタッフとRのメンバーたちの士気も上がっているような気がする。

・・そんな中、あたしはもっとテンションが上がって頑張れるか、と思いきや、体力がついていかず、思うように動けないことに悩まされていた。

コンサートの流れは確実に頭の中に入ってる。だから、次はどうして、次はこうして、というのはすぐわかる。

ただ、どうしてももたついてしまう。

みんなどんどんやる気を出していってるのに、あたしだけがついていけないことが情けなくて、悔しい。

そして、特に落ち込むのが・・・。

「優美!てめえ、何度言ったらわかんだよ!」

リハーサルが始まってから3時間、輝の怒号が飛んだ。
あたしは、なぜか輝専属の通しスタッフになった。だから輝の着替えなり、水を渡すなり、移動の誘導なりをすることになる。

ここに来てから、約2週間。
必然的に輝と関わる機会が多くなる中で、輝はあたしを優美と呼ぶようになった。
そしてあたしも、輝と呼んでいる。

でもそれは、あくまで仕事上での流れを円滑にするため。

とゆうか、あたしは輝がここまで、怒りっぽくて、マイペースで、怖くて、優しさのカケラもないくらい冷たい人だとは思っていなかった。

だから、ファンであった時の、実は優しいんじゃないか、とか、たまに見せる笑顔がいい、とか、そんな胸キュンポイントやら、勝手な妄想は費えた。


だから今では、輝の仕事に対する姿勢に尊敬はしても、ファンであった時の、盲目的な憧れはなくなってしまった。

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