迷宮の魂

「この男、やった事件って全部女絡みじゃん。スケコマシなのかな」

「女泣かせかあ、泣かせて貰えるんなら、朝まで泣かせて欲しいもんだよ」

 男っ気の無さから来る女の下卑た会話。彼は格好の餌だった。

 あの人と島で初めて会った時、直ぐに思い出した。

 実物の彼は、あたしをじっと見つめて、ふと哀しい顔をした。

 彼もあたしの事を感じたのだと思う。

 さりげなく、彼に遥は伝えた。

 彼は否定した。

 当然だろう。

「大丈夫よ。警察になんか言いやしないわ」

 何度もそう言って上げた。そうこうしているうちに、

「あたし達、一緒よ。互いに居場所の無い人間なのよ。無い者同士、お互いが居場所になろう」

 自分でも思い掛けない言葉を口にしていた。

 遥がそう言う度に、彼は哀しい目をし、そして石のようになる。感情を押し殺し、誰をも近寄せない厚い壁の向こうに身を隠してしまう。

 それでも、あたしはこの人を好き……

 だが、本当にそうだったのだろうか。

 島を離れ、二日、三日と時を重ねている間に、その事を自問してみた。

 離れてみてはっきりと判った。やはりそうなのだ。

 いや、それ以上のものだった。

 好きとか、愛しているとか、そんな甘ったるい感情ではない。

 あたしの壊れた欠片は、あの人の壊れた心を埋められる。

 そして、あたしの壊れて失った心には、あの人の欠片が埋まる……

 それが、遥が導き出した答えだった。



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