迷宮の魂

 どれ位眠っていただろうか。むかつきはまだ残っている。

 ベッドサイドの時計を見ようと頭を回すと、ソファで丸くなって寝息を立てているルカの姿が目に入った。

 ベッドサイドのデジタル時計は、彼女がこの部屋に居られる時間をとっくに過ぎている。

 アルコールの抜け切らない身体をゆっくりと起こし、彼女に声を掛けた。

 何度か声を掛けて、漸くルカは目を覚ました。

「ごめん、寝てしもうた」

「時間、オーバーしてるよ」

「ああ、かまへん。事務所には電話したから。もう今日は上がりや」

「大丈夫なのか?」

「うちみたいなん指名する物好きはそうおらんから」

「俺は、その物好きな客か」

「ごめん。そういう意味やのうて……」

「君は謝ってばかりだね」

「ほんまやわ。ねえ、具合はええの?」

「うん、まだ少しむかつくけどね」

「うちのこと気にせえへんと、もう少し寝とったらええんとちゃう?あっ、うちみたいのんがおったら眠れんよね。じゃあ帰るわ」

「金、まだ渡してないよ」

「ええよ。貰うような事、なんもしてへんもん」

 そう言って出て行こうとするルカの腕を男は掴んだ。

 その力が意外に強く、ルカは瞬間身を硬くし怯んだような表情を見せた。

「どうしたん?……」

 目が合った男の視線は、更にルカを怯えさせるほどに険しかった。

 その時、男の視線が掴んでいた左腕に注がれている事に気付いた。




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