迷宮の魂
何時もと同じように向かう円山町のホテルまでの道すがら、ルカは何時に無く軽やかな足取りで歩いた。
この夜、初めて純一に抱かれ、そして初めて客とのセックスでいった。
彼のセックスは決して技巧的ではなく、寧ろ全ての動きがぎこちなかった。だが、多くの客達がそうであるような独りよがりなセックスではなかった。
ルカは自分でも驚くほどに声を上げ、積極的に純一を迎え入れた。自ら高まりを求め、息を荒げる純一の背中へ回した手に力を込めた。
爪が食い込む。
何度も昇りつめ、彼が頂に達した時には全身の力が抜けた。
満ち足りたまどろみを迎えた。
ずっとこのままでいたい……
そんな事をふと思ったが、ルカはすぐさまそれを打ち消した。
腕枕をしている彼の左手首がルカの顎に触れた。そこにそっと唇を当て、指で傷痕をなぞりながら数え始めた。
「……八つだよ」
彼が言った。
「うちより三つ多い……」
ルカが自分の手首を見せた。
彼はルカがしたように、その傷痕に接吻をした。
「純さんの方が深い傷やね」
「なかなか死ねないもんだ」
「死なんでよかった」
「……」
「純さんとこうして逢う事が出来たもん」
彼の腕に力が込められ、ルカの頭が胸に押し付けられた。
「俺だけ、死に切れずにのうのうと生きてしまった……」
ルカはそれ以上喋らせまいと、彼の口に掌を当て、塞いだ。