スイッチ
冷たく、もう握りかえす事のない母の手。 白髪も目立って見えた。 通夜が終わり、母を棺桶に入れると、母が小さく思えた。再婚する事もなく働いて、働き詰めで、私を残して一人だけで逝ってしまった。「こんな事、しなくたってよかったのに!」 母が畳んでおいた私の洗濯物。母の匂い。開いてはたたみ、また開いてはたたみ直し、母を真似ながら泣いた。
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