Around‐30 譲れない戦い
 
智は私と結婚する気はない。

私だけじゃなく、誰とも。

今の給料じゃとか、生活力がないとか、無理だとか。

もうそんなことは聞き飽きて耳にタコが幾つも出来ている。


結婚してくれないの?と、問い詰めると。

『い~いんだ、俺なんか…』

っていじけ出す。


私も仲良くさせてもらっている智の会社の人、山下さんに協力してもらったって、本人にやる気がない。

『結婚?しねーよ』

そう言ってたって、耳にしたのは半年も前。


付き合って9年。

私の部屋に転がり込み、同棲するようになって7年。

そして、この新居に移り住んで1年。

お互いの実家に挨拶しに行ったのが今年のお正月。


ここまで来たら、結婚秒読み状態。なのに…。



何を期待して今まで一緒にいたんだろう。

振り返ってみると…、無駄な9年だったなって、笑うしかできない自分にびっくりしてる。

20代の9年って貴重なのに。

大事じゃないこの9年って年月?


…あんたは警備と結婚でもすればいいよ。



『最終的に私のところに戻って来てくれればいいから』

そんなこと言ったこともあったっけ…。


『かおりの傍が一番落ち着く』

なんて言われたこともあったよね…。



年が変わる前にはっきり白黒つけなきゃ、またダラダラ繰り返す。
< 8 / 9 >

この作品をシェア

pagetop