Around‐30 譲れない戦い
智は私と結婚する気はない。
私だけじゃなく、誰とも。
今の給料じゃとか、生活力がないとか、無理だとか。
もうそんなことは聞き飽きて耳にタコが幾つも出来ている。
結婚してくれないの?と、問い詰めると。
『い~いんだ、俺なんか…』
っていじけ出す。
私も仲良くさせてもらっている智の会社の人、山下さんに協力してもらったって、本人にやる気がない。
『結婚?しねーよ』
そう言ってたって、耳にしたのは半年も前。
付き合って9年。
私の部屋に転がり込み、同棲するようになって7年。
そして、この新居に移り住んで1年。
お互いの実家に挨拶しに行ったのが今年のお正月。
ここまで来たら、結婚秒読み状態。なのに…。
何を期待して今まで一緒にいたんだろう。
振り返ってみると…、無駄な9年だったなって、笑うしかできない自分にびっくりしてる。
20代の9年って貴重なのに。
大事じゃないこの9年って年月?
…あんたは警備と結婚でもすればいいよ。
『最終的に私のところに戻って来てくれればいいから』
そんなこと言ったこともあったっけ…。
『かおりの傍が一番落ち着く』
なんて言われたこともあったよね…。
年が変わる前にはっきり白黒つけなきゃ、またダラダラ繰り返す。