time
 




行儀悪く口端に付けてしまったアイスクリームを拭くことも忘れ声を漏らす。声がする方に振り向き忘れてた、と良いそうになる寸前でその言葉を呑み込んだ私は天才だと思う。


「・・・アイスクリームが食べたいのに蒼衣(あおい)が遅いから先に帰っちゃった」
「あ、マジで。忘れられてんのかと思ったんだけど、よく考えたら俺遅かったね」


ごめんごめん、と本来なら私が言うべき言葉を蒼衣は軽々と言ってのけ私の隣りへと立ち再び歩き出す。天然なのか、素なのか、いや素ならば逆に驚きなのだがこんなちょっと阿呆な蒼衣を気に入っていた。幼馴染みと言うこともあり普通に話しているが彼は先輩である。私は高校2年生、彼は同じ高校の3年生だ。友達がいない私を気遣ってなのか都合が付く限り登下校を一緒にしていた。

同情なのか、お世話好きなのか。


「アイス美味い?」
「飽きた」
「あれ、そんなに毎日食べてたっけ?」


いや、30分程前に食べ終わったからなのだけれども。かもね、と気が抜けた返事をしてがぶりとアイスクリームにかぶりついた。この不思議な体験は蒼衣にも言っていなかったのだ。





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