time
 



あと二つ曲がり角を曲がれば私達の住んでいる住宅地。


「あのさ、」
「んー」


かぶりついたまま蒼衣を見た。緩めに耳の下で二つ結びになっている髪を優しく掴むとゴムの間に指を差し込みぐっと下に引っ張った。びっくりしたまま蒼衣を見ていると再び下にゴムを移動され今度はするりと抜けた。


「千明、髪結ばない方が可愛いよ」
「でも、邪魔」
「切ればいいの・・・、あー・・・やっぱダメ」
「意味分かんないよ」


クスクス笑うと、だよなぁと彼も顔を緩ませる。もう片方も簡単にゴムを取られさらりとした胸元までの黒髪が下ろされた。結び跡を無くすように指で梳かす蒼衣はなんだか嬉しそうに見える。


「特別に、明日は髪を結ばないで行ってあげる」
「やった!」
「じゃ、また明日」
「じゃあな」


ひらひらと掌を動かし別れを告げ玄関を開け中に入った。ちょっとだけニヤけてしまった頬には気付かないふりをして、お母さんの声も無視し、そのまま部屋に直行をした。ああ、どうしたんだろう。顔がほてってるみたい。

こんなこと、同情かも知れないと言うのに。

それでも、冷めないこの熱はどうしてしまったのだろう。






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