求愛ラバーズ
「三井さんと葛城さん仲いいじゃないですか〜。そういう話しないんですか?」


「しないな。」


「じゃあ、何話してるんすか?」


「仕事の事。」


「絶対嘘っすね!」





………こんな事で嘘ついてなんになる。





「あと10分もしないうちに、社長と戸高さんが帰ってくるぞ?知らねぇからな。」





時計を見た桑畑は、止めていた手を動かし煩いぐらいにキーを弾いていく。





社長と戸高さんがいない時はいつもこんな感じだ。





帰って来る時間前にはせかせかと仕事を再開しだす。





社長は穏和なほうで、怒ったところなんか一度も見た事ないけど、戸高さんは鬼のように恐い。





「おい……まだ終わってねぇのか?」





ほら、鬼の形相を浮かべ帰って来た。





「と、ととと戸、高…さん。」


「お前、入社して何年だ。」


「3年です……。」





戸高さんを目の前にして縮こまる桑畑。





「それ作るのに何時間かかってんだよ。残業な。」


「うぇー!?」


「なんだよ。誰が悪いんだ?」


「…残業します。」





あの目で睨まれたらなにも言えないよな〜。




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