出世魚
浮魚
会社で“テトリス誰が一番強いか”なんて
話しになったから、
今日は久江さん家でテトリス大会。
黙ってたけど、私超得意・・・
久江さんに良い所みせなくっちゃ。
「栗原さん超強くねぇ?」
「そんなことないですよ。」
謙遜するも、ダントツで一位です。
相手が誰だろうと手抜きはしません。
「もう一回!もう一回だけ勝負して!」
皆が諦める中、久江さんだけが
食い下がる。
「久江さん負けず嫌いですね~。」
「うるさいよ、お前。」
後輩にバカにされるも、
コントローラーを離さない久江さん。
「ゴメンなさい、私達帰らないと。」
序盤で戦線離脱した女子達が
身支度を始める。
「マジで?ってもう12時か。」
「じゃぁ、私も・・。」
これは流れに乗っておこう。
バッグを取りに立ち上がろうとする。
「ダメだよ、栗原さんは俺と
もう一勝負してから!」
腕を掴まれ、久江さんの隣に座らされる。
「そうそう、久江さんどうしても
栗原さんに勝ちたいみたいだから。」
「でも、ほら、夜道 伊藤さん一人じゃ
危ないでしょ。私、同じ方向だから。」
すかさず女子に助けを求める。
「桑田、お前伊藤さんのこと
送って行け!」
「あ、大丈夫ですよ桑田さん。」
「いえいえ、ちょうど帰る方向
一緒ですし、送って行きます。」
え、桑田さん、まんざらでもない顔。
もしかしてこの流れを予想していた?
だとしたら、私100%邪魔だよなぁ。
「じゃ、そういうことで!」
「お疲れっした~。」
「お邪魔しました~。」
「気をつけて~。」
「・・・。」
私と久江さんを残して、
皆は帰って行った。
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