合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
「それと、もうひとつ。もう白石達から情報流れてるかもしれないが、俺は来年の二月に育児休暇を取ることにした」

「ねぇ、それ本気? でも、我が社にそんな制度、あったっけ?」

「嗚呼、制度自体はあったんだがな、取った者がいなかった。森山の話だとな、今度の育児介護休業法の改正(注:実際には、この改正の施行はH22.06.20.からです)で、『配偶者の出産後八週間以内に父親が育児休業を取得した場合には、特例として育児休業を再度取得できるよう要件を緩和する』ってことになったらしんだ。で、俺はその第一号として、二月に二週間の育児休業を取得する」

「もしかして、実験的取得?」

「ま、そういうことだな。出産に立ち会って、俺の意識も変わった。子育てってのは、もっと生活感あふれるもの、生きてるって実感そのものなんだなってさ。真樹の子育ては晶子に任せっ切りだったからな。今度こそ、俺も本当の意味で父親になる。だから、全力で子育てにかかわるつもりだ」

「雅樹?」

雅樹がそんなこと考えてたなんて、知らなかった。

「いいだろ?」

「いいもなにも、この子はあたし達二人の子だよ」

「共に歩もう!母親だからって、裕子が一人で子育てを担うことはない」

あたしは、子育てを含めたこれからの家族の生活を、雅樹が真剣に考えてくれていることが嬉しかった。

不安も不満も困難も、きっと二人でなら乗り越えられる。

何より、愛する同志の存在が今のあたしには必要だったんだ。

「裕樹と三人で、幸せになろう!」

これから待ち受ける、仕事と育児の両立の荒波に向かって、大海へ漕ぎ出す冒険者さながら、あたしと雅樹は二人、固く誓いあった。
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