合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
勿論、あいつとの外回りは楽しかった。

一緒にいると心が浮き立った。

あいつの仕事振りを見るのも気持ちが良かった。

白石や森山のためにも良かったと思う。

やっぱり同姓のお手本がいる方が幸せだよ。素直にそのまま真似すればいいんだから。

「じゃ、柏木、その後のスケジュール詰めてもらえるか?」

「え、あ、はい」

「柏木?」

「納入スケジュールは、九月末ですから、システムの方に八月中にはデモ用のソフトを仕上げてもらいましょう。ね、柏木先輩」

「あ、そうね。それで進めて」

森山の言葉に我に返った。

いけない、いけない。仕事に集中しなくっちゃ……

気持ちとは裏腹に、あたしの気分は仕事どころではなかった。

「じゃ、俺はこれで社に戻るから」

そういうあいつと駅で別れた。
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