合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
気がついた時は病院のベットの上だった。

部屋の中を見回すと、窓の側に立つ黒い人影に気がついた。

が、逆光で顔が良く見えない。

「だれ?」

不安になって、口を開いた。

「お前、過労だってさ。
夜も眠れてないんじゃないか? 随分痩せたみたいだし。
軽かったぞ、抱き上げた時」

「なんで……なんで雅樹がここにいるの……」

「あの後、直ぐに森山から携帯に連絡が入って、お前が倒れたって。
で、直ぐ引き返して俺がお前を病院に運んできた。
森山はそのまま仕事に戻ったぞ。
大丈夫任せといてくださいって、伝言だ。
お前も、いい部下を持ったじゃないか。出来はどうあれ、心強いな」

「ご迷惑、おかけしました。
すいません。
体調管理も仕事のうちですよね、恥ずかしいです」

そう口にしたとたん、涙が溢れた。

「俺のせいか?」

優しく、労わるような声が近づいてくる。

「こないで!」

叫んでいた。

「お願いだから、こないで……」

そう泣きながら、あいつに抱かれていた。

あいつの温かい腕に包まれて泣いていた。
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