合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
あたしは、あなたの子を勝手に殺した女です……

なんて、言えないよね、やっぱり。

雅樹の思いに答えたいけど、答えられない。

もどかしい思いに身体を強張らせていた。

「樹君に聞いたよ、何もかも。過去のことは全て忘れよう。俺が愛してるのは、今ここにいる裕子なんだ。もう一度言う。俺と結婚してくれ」

あたしは、その言葉に驚きを隠せない。

雅樹はあたしの秘密を知っている。

樹が知らせた?

知って、なお、あたしを愛そうとしてくれているの?



もう一度、信じてみよう。



あたしは躊躇しながらも小さく頷いた。

そしてまた、口を塞がれる。

息をする隙も与えられないくらい、激しく、熱く、貪るように、あいつがあたしを求める。



夢なら覚めないで……と強く願った。

< 76 / 215 >

この作品をシェア

pagetop