合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
夜中に目が覚めた。



あ……と記憶の糸を手繰り寄せる。



手を伸ばすとあいつに触れた。

(嗚呼、夢じゃなかった……)

その額に、そっと口付ける。

そして、左薬指にはめられた指輪を、右手でなぞった。

『今更、ノーはなしだぞ。クリスマスプレゼント兼婚約指輪だから』

あいつがそう言って、あたしの指にはめた。

『俺は結局、晶子のためと思って、あいつを縛りつけていたんだな。あいつにしても、俺と別れて若い男の元に走るのが、良い事なのか悪いことなのか自分でも判りかねていたんだ。今、晶子は新しい家族と幸せにやってる。真樹もすっかり向こうに懐いているようだし。だから、今度生まれてくる晶子の子はちゃんと否認をして、向こうの実子になれるよう手続きをするつもりだ。真樹は養女ってことになるがな。時間は無駄にかかったが、落ち着くべきところに落ち着いたってことだ。だから、俺も吹っ切れた。今度は自分のことをちゃんとしようって』

あたしはあいつの言葉を繰り返し噛み締めていた。

『裕子、愛してる。もう離さない』

あなたがいればそれだけで……

「雅樹、愛してる。もう離れない」

あたしは、もう一度、その額に口付けた。
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