フェイクハント
第四章 一・否認
「俺は知らねぇよ、ナイフと弓矢を買ったことは認めるが、誰も殺しちゃいねぇよ。何度も同じこと訊くなよ!」


「嘘をつくな! じゃあ何で買ったんだ! 人を殺すためじゃないのか!」


「チェスターと同じ武器を持ってみたかっただけだって、俺は殺してねぇよ」


 チェスターと疑われた男は、警察の取調べに否認を続けていた。

 昼間なのに薄暗い取調べ室は、灰色の安っぽい机と、背もたれのない椅子が二つ、一つは刑事が座り、机を挟んだ向かいにある椅子には、チェスターらしき男が座っている。狭い部屋の隅には机が置いてあり、壁を向く方向で椅子に座り、調書を取る刑事が一人座っていた。

 チェスターこと犯人と疑われている男は、二十二歳の無職であり、明らかに不審な行動をしていた。ナイフと弓矢の販売店のビデオカメラにもハッキリと映っていたことから、周辺を訊き込みしていると、一件目の事件現場や二件目の事件現場に現れ、薄気味悪い笑みを浮かべている姿を、多々目撃されていたのだ。


「フェイクハントの本物の武器が欲しくなっただけだよ! それの何がいけねぇんだよ! 俺は殺してねぇよ」


「それにな、アリバイもないじゃないか! どう説明するんだよ!」


「そんなの知るかよ! アリバイ作りながら生活する奴なんていねぇし」


 一向に否認を続ける男を、マジックミラーから見ているのは、篠田と海人だった。


「認めねぇな、しぶとい奴だ! 確かな証拠を探すしかないな」


「そうですね。でも任意じゃ、家宅捜索もすぐには出来ないですし。他の線から証拠を見つけていくしかなさそうですね」


 篠田と海人は、再度捜査に動き出した。

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