フェイクハント
 涼は家に帰ってから、何も手につかずソファに座ったきり考えていた。

 チェスターらしき男の取調べはどうなっただろうか? その男が、静夫と遥、雪絵を殺したんだろうか? 静夫と雪絵は河川敷だけれど、遥の場合は私有地で殺された。その男がお通夜に来て新たな犠牲者を選んだということなのだろうか? それがたまたま遥だった? 静夫を殺し、家を突き止めるのは容易なことだっただろう。

 でも、静夫が殺される前の被害者三人は、年齢も性別もバラバラだ。共通点がないらしいので、警察では無差別殺人という見解らしいが、静夫と遥と雪絵は同級生で、友人という共通点もあるし、無差別だとはいえない……。

 そこで急に涼の視界が明るくなり、驚いて上を見ると部屋の電気が点いたことに気付いた。


「何やってんだよ電気も点けないで」


 どうやら海人が帰ってきて部屋の電気をつけたようだった。涼は日が落ち、外が暗くなってることにさえ気付かず、考え込んでいたのだ。


「あっ、おかえり。私電気つけるのも忘れてたみたいね。ご飯の支度するわね」


 涼は力なく微笑すると、すぐに立ち上がったが海人がそれを制した。


「いいよ、ほら買ってきたから一緒に食べよう。コンビニので悪いけどな」


 海人はコンビニの袋を持ち上げると、涼に見せ笑った。
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