フェイクハント
 静夫の葬儀が済むと、順に遥、雪絵と次々に同級生達の葬儀が行われた。

 残された涼、典子、海人、秀樹の四人は、悲しみを抱えながらも、少しずついつも通りの生活を取り戻しつつあった。海人は相変わらず捜査で忙しく飛び回っていた。


 そんなある日、涼は典子と一緒に、静夫と雪絵が殺されていた河川敷に、花を供えようと思いつき、典子に電話をかけたが留守のようだった。携帯にもかけてみたが、どうやら電源が入っていないのだろう、呼び出し音も鳴らなかった。

 仕方なく涼は一人で河川敷へ向かった。

 河川敷までは、たいして距離もないので、自宅から歩いて行った。

 静夫と雪絵が殺されていた側にあった桜の木が見えてきた頃、視界に典子らしき姿が見えたので、涼は、ああ典子も花を供えにきたんだなと思い、近づいていった。

 そして声をかけようとした瞬間、典子は不気味に独りで声を出し、笑いながら何かを破り捨てていた。その光景を見た途端寒気がした涼は、腕を擦った。そして典子に声をかけることなど出来ず、典子に気付かれぬよう静かに引き返した。

 涼は、典子が受けたショックの大きさを考えれば、今まで平静に振舞っていた緊張の糸が切れてしまったんだろうと解釈し、胸が痛んだ。
 そう思うのと同時に、典子が破っていたのは何だったんだろう? 
 涼は歩きながら首を傾げた。

 自宅マンションに着いてからも、涼の脳裏には河川敷で見た典子の姿が焼きついて離れなかったため、押入れから中学時代のアルバムを引っ張り出すと眺めていた。そこには無邪気に笑う涼達七人がいた。
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