フェイクハント
二・犯人の供述
「そうだよ、俺が殺したんだよ。チェスターみたいに、ヒーローになりたかったからな。だからナイフと弓矢も本物が必要だったのさ、全国で売られてるフェイクハントのおもちゃじゃ、人を殺せないからな! でもムチは十分おもちゃでも殺せたよ! ハハハ!」


「じゃあ、殺すのは誰でも良かったのか?」


「まあね、チェスターみたいに、三つの武器全部を使って、人を殺してみたかったんだよ」


「お前は無差別に、六人もの人間を殺すことに、何も感じなかったのか?」


 チェスターこと犯人と疑われていた男は、警察の必死の捜査から、ようやく犯行を認める供述を始めた。

 しかし、取り調べている篠田の質問を聞いた途端、男は座っていた椅子を倒すと勢いよく立ち上がった。


「はっ? 何云ってんの? 俺は三人しか殺してねぇ〜よ! チェスターと同じように、三種類の武器を使って三人を殺したら、それで満足だったんだ。だけどニュースを見て、俺と似たような奴がいるんだなとは思ってたけど、俺は後から殺された三人は知らねぇよ!」


 それから、篠田が何度訊いても、男は始めの三件の犯行は認めたが、後の三件は頑として認めなかった。
< 61 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop