ドライヴ~飴色の写真~
「いや、だって……」
 
 私がこの妙な展開に困惑していると、篠さんが提案の理由を丁寧に解説してくれた。

「まず、なぎさん自身がこの部屋に一人でいるということが、しばらく恐怖だろう。一番安心出来た場所が、今は一番怖い。そうじゃないか?
 次に、犯人を見つける為には、出来るだけオレ自身がなぎさんのそばにいた方が効率的に良い。《ストーカー》なら、すぐにオレの事務所に辿り着くだろう」

「おびき寄せるってことですか? でも、そこが探偵事務所ってわかった途端、犯人は警戒しませんか?」

 私は、思わず口を挟んでしまった。
 だが篠さんは、相変わらずのポーカーフェイスの横に右手を掲げ、指を3本立てて見せた。
 
「そこで三つめ。オレが一番優先したいのは、なぎさんの身の安全確保だ。一緒に住むことで、出来るだけそばにいる時間をつくって守ってやるつもりだが、犯人が警戒をしてなぎさんに近づかなくなるのなら、それに越したことはない」

「でも、それじゃあ、犯人を見つけるの難しくないですか」

 私が懲りずに更に口を挟むと、篠さんは小さな溜息をついた。
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