ドライヴ~飴色の写真~
 篠さんは優しい。

 篠さんに出会ったばかりの私なら、きっとなかなかそうは思えなかったろう。


 いつも淡々としていて、考えていることが読めないし。

 口の片端だけ上げる、なんかムカつく笑い方をするし。

 和紗(なぎさ)の《さ》を省略するし。

 変に自信過剰だし。


 だけど、篠さんのたまに見せる優しい笑顔や、優しい言葉を見つけてしまった時、正直いつも戸惑っていた。

 わけわかんない篠さんのままでいてほしいのに。

 篠さんが優しいと、私は困るのだ。

 
 今も、少ない依頼料で、ここまで親身になってくれる篠さんは、不思議以外の何物でもなかった。
< 49 / 137 >

この作品をシェア

pagetop