グレーな吐息~せぴあなタメ息③~
「思いっきり雨降ってるのに、この中、走って帰るつもりだった?」

あたしはうなずいた。

急に振り出した雨。

あたしは傘なんか持ってなくて。

でも、このままでは、冴島さんが母に対面してしまう。

そう思うと、体が走り出そうとしていた。

「せっかく正装したのに、濡れちゃうところだった。

・・・って、オレが悪いんだけど。

それと、

できたら、オレ的には、『女の子な』正装が良かったけど」

ちろりと、冴島は類を見た。

類は、サラリーマンのようなスーツに、ネクタイ姿。

「でも、コレがルシアンのメンバーからの要望なんだ」

「その格好で歌えって?」

「そう。男の格好でなら、歌っていいって。

一応元ヴォーカルは男だから、そのスタイルは維持して欲しいらしいよ」


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