グレーな吐息~せぴあなタメ息③~
ちらって、冴島が視線を落とす。

「あの、大丈夫?」

「え?濡れてませんけど?」

「うん。そうかもしれないけど、すごく心臓バクバクしてるみたいだけど」



あ。

伝わってましたか。

恥ずかしすぎて、傘から出ようかと思った。



「これ、酸の雨だと思ってよ」

冴島が言って、類は傘から出るのを一瞬やめた。



酸?

とけちゃう!?



類は、急にそれが本当な気がして、冴島の腕にしがみついた。

それを見て、冴島がにこっと笑う。

”よろしい。目的地に到着するまでそのまま離れないように”

笑顔で脅す。



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