姫密桜
その手は、ポンポンと
軽く、優しく

彼女に、触れる。

そんなに、彼女に
優しくして
あげたいんだね。

私は、お弁当の蓋を
閉めた。

「サクラ
 食欲無いの?」

和歌子の声が遠くに
聞こえる。

苦しい・・・

『やめて
 
 彼女に触れないで』

叫びだしたい。

でも、できない・・・

苦しくて、苦しくて
堪らない。

嫉妬で焼けつく胸に
手をあてる。

「サクラ、どうした?」

槇の声

槇、助けて・・・
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