動き出す時計
柚音が一人で生活するにあたり、十分に広すぎる家が用意された。


生活費も、母親がたんまりと出してくれている。


女優業とモデル業、お金など腐る程あるのだろう。


――………こんな、家すぐに出ていってやる。


――………あの人の助けなんて必要としないように早く自立してやる。


そう柚音は常に自分に言い聞かせていた。


テレビや雑誌の中でにっこりと笑う母親。


その笑顔を、私に一度だって向けたことある?


お金なんていらない。


あなたなんて嫌い。


嫌い。


柚音の気持ちは、誰にも伝わることなく胸の中に納められていった。


まさか、こんな柚音の“当たり前”がぶち壊される日がくるなんて、誰が想像しただろう。


その時は、何の前触れもなく、突如……―――


訪れた………――――



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