動き出す時計
どくん、と柚音の心臓はうるさく音を立てた。


それが緊張からくるものなのか、焦りからくるものなのか、不安からくるものなのか、柚音にはわからなかった。


思わず足取りが早くなる。


なんだか、家に帰ってはならないような気すらしてくる。


嫌な予感が柚音を襲ってきたのだ。


何かが大きく変わる、変わってしまう、そんな気がした。


……―――


カチャリ、と恐る恐る家のドアを開ける。


やはり、当然だか電気が点いているようだ。


柚音の心臓はいまだにうるさく音を立てていたが、次の瞬間、柚音は心臓がぱぁん!と破裂するのではないかと思った。


「柚音っ!お帰りなさい!」


…………女優兼モデル。


世の中の女性達が憧れる、その美しい女性が、眩しい程の笑顔を浮かべながら柚音に笑いかけていた。


< 8 / 14 >

この作品をシェア

pagetop