(KS)Brand new cherry.
永が踊り終えたその瞬間、木々には蕾が付き、幾つかの蕾はすぐに開花を始めた。

何百年ぶりかの生まれ変わった真新しい桜である。

その桜をみずきはまた泣きながら眺めていた。


「お前はよく泣くな」

「感動して泣かないなんて、勿体ないですから。美しい舞いと、美しい桜を有難うございます」


 丁度その時であった。

「おぉい」


遠くから聞こえる声のする方を見れば、そこに人がいると言う事がかろうじて分かった。

この森にさまよう人間はただ一人。藤市である。

みずきは涙を拭い、藤市に此処にいる事を出来る限りの大きな声で伝えた。
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