(KS)Brand new cherry.
「何をしている」


みずきが一歩踏み出したその時であった。前方から男の声が聞こえたのは。

だがその声の持ち主は探している藤市の物ではなかった。

その声は藤市よりも僅かではあるが低い声であった。みずきは声の聞こえた前方を見る。

するとそこには月のように輝く銀色の短い髪が印象的な男が立っているではないか。

身につけている藍色の着物は右だけ裾から腕を出し、

左の裾はだらしなく垂れて巻いているさらしが露わになっている。


「人を探しています。この辺りで若い男を見ませんでしたか」


怖いと思う事もなく、みずきは躊躇いもなく近付きながら男に藤市を見かけなかったかと尋ねた。
< 6 / 53 >

この作品をシェア

pagetop