(KS)Brand new cherry.
「このような枯れ木だらけの中でも迷う事ってあるのですね」


みずきの放ったその言葉に誰も返事をする事もなく、ただ空気に溶けて消えて行った。

みずきは困った。藤市のいないこの状況下でどうすれば良いのかが分からなくなってしまったのだ。


「藤市さあん。いたら返事をお願いします」


まずは大きな声で藤市の名を呼んでみる。しかし返事は返っては来なかった。

みずきは藤市は自分の声の届かない場所にいるのだと、推測した。


「少しだけ前に進んでみましょうか。こうなってしまっては仕方ないですしね」


みずきは自身にそう言い聞かせ、前に進む。

元来た道を戻って行ったとしても変わらぬ景色が延々と広がるだけであるこの場所。

更に迷う恐れの方が高い。前に進む事も更に迷う要因に繋がってしまうであろう。

しかしみずきは何もしないよりは良いと判断したのだ。
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