忘れ物。
「奈緒は、彼氏とはどう?」
さりげなく聞いてみた。
その質問で、奈緒の顔色がガラッと変わったのが分かった。
あまり触れない方が良かったのかもしれない。

「微妙。最近・・・・」
奈緒は言いかけて止まった。
最近・・・・何なのだろう。
「え、最近どうしたの?」
「多分、浮気?してるかもしれないな。」

奈緒は下唇を噛みながら言った。
浮気してるなんて話、初耳だから驚いた。
それほど奈緒は、人に悩みを打ち明けない人間なのだ。

「本当に?何で?いつ分かったの?」
「んー・・・。ま、よく分かんないからいいや。」
奈緒はそれだけ言って、教室へ帰っていった。
多分、奈緒は今とても悩んでいるのかもしれない。
でも河口君が他の女の子と仲良くしてる所なんて見たことないし
もしかしたら本当に、奈緒の思い違いなのかもしれない。

私は少しもやもやした気持ちを抱きながら、2組へ戻った。
奈緒とは違うクラスで、2組に友達はあまりいない。
多分私は、友達作りというものが苦手なのだろう。
だけど何故か、あんなにさっぱりして少し近寄りがたい存在のような奈緒の近くには、よく人が集まっている。
案外奈緒の方が、友達は出来やすいのかもしれない。


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「あ、レイ。」
私は小さな声で呟いた。
家の前に、一人で突っ立っているレイが視界に入ったからだ。
何をしているのだろう。
でも私にとっては好都合だ。
私はレイに気付かないふりをして、普通に歩いた。

「麻ー!」
レイは私に手を振った。
私は手を振り返さず、そのままレイの所まで歩いた。

「何でいるの?」
また素っ気ない態度を取る私。
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