きっと世界は君のもの


適当に電車に乗り、降りては目的もなしに歩いた。

誰も居ない、小さな公園を目にして
あたしはブランコに乗る。


『今日、あたしの誕生日なのに』

ギィ、と静かな公園にブランコの音だけが鳴る。


『まさか誕生日に、遊ばれるなんて』

それだけ、あたしのことはどうでもよかったんだ。


そう思うと、糸が切れたかのように冷静だった心は一変し、鋭い刃物で傷つけられたような痛みが心を襲う。


『ふぇっ・・・』

やだよ。別れたくない。
こんなに大好きなのに。


あたしだけを好きでいて、って我が儘言わないから。
遊びでもいいから、傍にいさせて。


夕焼け色に包まれる空が、なんだか無性に虚しくみえる。


―ヴ-ッヴ-ッ

ふと携帯のバイブが鳴っているのに気付く。


( いまどこ )

素っ気無い冷たい文の彼からのメール。

見れば他のメールも着信も何度かある。

『返事、どうしよ』

 ・・・いいや、無視しとこ

そう思い携帯を仕舞おうとしたとき、今度は電話がくる。

『・・・・』

 出ちゃ、いけない。

そう思っているのに

『・・はい』

体は彼を求めて動いてしまう。

「どこにいんの」

電話越しの彼はひどく怒っていて、思わずビクリと震えてしまう。


< 22 / 59 >

この作品をシェア

pagetop