月と太陽の事件簿12/新幹線殺人事件 静岡‐掛川間49・1キロの謎
「それか発車の直前かもしれんな」

「犯人は凶器のナイフを現場に残しているんですよね。発車直前に急いで犯行に及んだのなら、充分に有り得ますよね」

「田村が自分で腹を刺したわけでなければな」

「まさか」

「疑ってかかるのが刑事の仕事だ」

言った後で、警部は大きなタメ息をついた。

一体どうしたというのだろう。

なにかこう、重いものを背負い込んだような、そんな感じだ。

「そういえば」

あたしはふと浮かんだ事を口にした。

「警部はさっき『ひとりめ』という言い方をしましたよね」

「ああ」

「もうひとり、被害者が?」

「そうだ」

「同じこだま号の乗客ですか」

「いや、一本あとのひかり号の乗客だ」

あたしはバッグの中から時刻表を取り出した。

この新幹線に乗る前に買ったものだ。

ページをめくって岸警部のいう新幹線を調べた。

こだま417号の次の新幹線はひかり78号。

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