帰郷

飛行機から降りた時に触れた空気は、関東に居るときより数段暑く感じた。おそらく気のせいだろうけど。大学に進学して二年目で初めての帰郷になる。ミナミにこの事を言ったら『この親不孝もの!』と、しこたま怒られた。帰りたかったが、金が無いから帰れなかっただけなのだが…。まあ何はともあれ無事に前期試験を終えた俺は、故郷である九州の福岡に戻ってきた。重いバックを担いで、地下鉄の入口に向かった。空港からは地下鉄が走っていて移動に非常に便利だ。切符を買って改札口を通り、発車寸前の電車に飛び乗る。偶然に空いている席を見つけてそこに座った。荷物を床に置いてから、携帯の電源を入れていなかった事に気が付いた。電源を入れるとメール着信が一件ある。見てみるとミナミからだった。 『頑張って親孝行するように! 後帰ってくる時には連絡するように!』 ミナミのメールに思わず苦笑いをしてしまった。お前さんは何者だよと思いながら携帯をズボンにしまって瞳を閉じる。二時間ちょっとの空の旅だったが、少しつかれていたのか、俺は睡魔に襲われ、あっけなく眠りに落ちた。
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop