アイ・マイ上司とlove★battle


暫くすれば先ほどと同様に、ポンと無機質なアナウンスと共に静かに扉が開かれる。



躊躇いもなくエレベーターを降りた涼子とは違い、私はもはや恐縮しか出来ずにいた。



「ね、ねえ…」


「鈴、いいから行くわよ」


なかなか降りようとしない私の為に、クルリと翻ってコチラへと戻って来た彼女に対し。



「い、いやいや、思いっきり場違い…」


ブンブンと豪快に頭を振りながら、足に力を入れてどうにか踏み留まろうとしていた。



だって目の前に広がるフロアは、明らかに一般社員が踏み入れて良い訳ないよ…!




「もう!そんな訳ないでしょ。

私たち社員だし?入室不可な訳ないから大丈夫よ」


「えー、ムリだってば…!」


少林寺拳法の賜物か、そんな私の抵抗もお構い無しに外へ引きずり出してしまった。



「ほら、だだ捏ねてる前に歩きなさい!子供じゃないんだから」


オマケに涼子の発言のヘビーさに、ムッとしながらも言い返せなくて悔しい私は。



フロアカーペットの敷かれたフロアを、ドスドスと意気勇んで歩いて見せたけど。




「…あれ、ドコ行くの?」


ふと我に返ってみると、その勇み音はピタリとなりを潜めてしまう滑稽さだ…。



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