アイ・マイ上司とlove★battle
ゆらゆら揺れる瞳が映すのは、フォーカスされて優しい色に見える眼差しで。
子供みたいにポロポロ零れる涙を拭ってくれるから、離れられなくなるじゃない…。
「だから!何で、そんな子に私が――」
歯軋りでも聞こえそうなほど、笹森さんの怒りを露わにした声が響くけど。
そんな彼女を冷たく笑った輝が、私の頬をそっと撫でるようにして触れた。
「鈴の良さは、俺だけが分かっていれば良い。
大体…人を見下すヤツにイチイチ話す義務は無いし、“良さ”が分かる訳ないだろ?
これまで仕事と割り切って潜入したり、鈴に対しての態度も堪えてきたが…。
これ以上、鈴を侮辱するようなら…俺はオマエを全力で――」
「はいはい、ストップ!」
私までゾクっとする鋭い眼差しを彼女へ向けた瞬間、ソレを寸断させる声が響く。
「――社長」
「稲葉、ソレ以上言うとパワハラだぞ?」
その一言で輝は我に返ったのか、社長を見ながらようやくフッ…と笑ってくれた。
「あの…、もう下ろして?」
だから恥ずかしい体勢をどうにかして欲しいと、苦笑しつつもお願いすれば。
「ん?誰かさんが泣くからヤダ」
「っ、もう泣いてないし…、それに」
「それに?」
いつものペースを取り戻した輝は、続けざまに私を追い詰めて来るから困りモノだ。