ガラス細工の花と機械仕掛けの白の翼
破れかけた地図は、雨に打たれたせいか、もはや文字が読み取れない。
と言っても、地図なんてただの子供のお遊び。
デタラメに書いた地図を見たって、家に戻れるはずなどない。
「此処…、何処…」
薄暗い森の中で彼は小さなため息を吐いた。
もう、どれくらい歩き回ったのだろう。
子供の話を信じて、地図通りに歩いて来た自分を酷く恨む。
彼には捜し物があった。
幼い頃から見続けている夢。
――湖の畔の灰色の塔に閉じこめられた蜂蜜色の髪の少女。
何度も何度も、同じ夢を見た。
いつも少女は泣いていて、ただ、「助けて…。」と、繰り返すだけ。
彼はその夢に異常な程に引き付けられ、その少女を捜す旅に出ていたのだ。
森の中の湖をヒントに、ありとあらゆる湖を捜し歩いた。
しかし、どの場所も夢の中の風景と一致する景色は無く、絶望的な日々が続いていた