ダイヤモンド・ヒーロー




「湊人には、野球を頑張って貰いたいの! あたしのことを考えずに…… ただ、野球を頑張って欲しいの」


湊人と繋がっている手を、強く握りしめた。


全寮制の湊人と会うなんて、難しいに決まっている。

体育科の湊人だから、休みの日だって練習があるに違いない。


毎日疲れて帰ってきて、それであたしにまで気にかけていたら、湊人の体が持たないような気がする。



「湊人だって…… 気づいていたでしょ」


「――― ッッ」


ずっと前から、あたしたちは気づいていたんだ。


でも、二人とも…… あえて“言葉”にはしなかった。

言葉にしたら……。



「あたしが泣とか思った?」


「…… まあ、な」


あたしが弱いから、湊人は“別れ”を声にする事が出来なかったんだ。

だから…… あたしから言うよ。




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