浮気女の嫁入り大作戦

 奈緒は歩き出そうとしたが、沢田は立ち止まったまま。

 その他の通行人はゾロゾロと横断歩道を渡っていく。

「ねえ、青なんだけど」

 という言葉を無視し、沢田は眩しそうな顔で突っ立ったまま。

 信号はすぐに点滅し始めた。

 スピーカーからはその旨を知らせる音が鳴る。

「あー、赤になっちゃった」

 唇を尖らせ、奈緒は眉間にしわを寄せた。

 こちらに渡ってくる歩行者もいなくなり、二人以外は車が横を通るのみ。

 そこで沢田はやっと口を開いた。

「あのさ」

「何よ」

「俺と結婚して」

 沢田は手を開き、小さい方の指輪を奈緒に差し出した。

 その小さな指輪の内側には、器用に文字が彫ってある。

“ T to N ”

 それが意味するところが

「俊孝 to 奈緒」

 であることくらい、さすがの奈緒も気付いた。

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