浮気女の嫁入り大作戦

 奈緒は何も言えず、目を見開いて固まってしまった。

 沢田の差し出した指輪も受け取らないまま。

 頭の中は「?」でいっぱいである。

 彼は私を嫌っているはずなのに、なぜ?

 ……と。

 彼の気持ちに、奈緒はずっと気付いていなかった。

 俺も一時は気持ちが離れたものだとばかり思っていたが、そうではなかったのだ。

 昨夜沢田は、泥酔して「気持ち悪い」としか言わない奈緒を優しく介抱した。

 奈緒はベッドにありつくなりすぐに眠ってしまったが、彼は愛でるように頬を撫で、微笑み、少しだけ迷うような顔をしながら、たった一度だけ口付けた。

 その時はまだ未練があるのだろうくらいにしか思っていなかったが、まさか結婚を考えていたとは……。

 ピクリとも動かない奈緒に、沢田は差し出した指輪を握らせた。

 信号は再び青になる。

「ほら、渡るよ」

 沢田は歩き出す。

 しかし今度は奈緒が立ち止まったまま。

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