浮気女の嫁入り大作戦

 感動的なプロポーズに憧れていた。

 夜景の見えるところとか、海の見えるレストランとか、ムード満点のシチュエーション。

 美味しい料理やワインを嗜みながら、サプライズでダイヤモンドの付いた指輪を受け取るんだ。

 金持ちで、顔が良くて、優しい男に。

 しかしここは、帰り道の交差点。

 シンプルな指輪にはダイヤなんて付いていない。

 相手は特に金持ちでもないし、顔も普通だし、中傷を言ってきた男だし。

 せっかく初めてプロポーズされたのに、何一つ当てはまらない。

 強いて当てはまるとすれば、サプライズということくらいだろうか。

 なのに、どういうことだろう。

 奈緒は今までになく感動している。

 指輪を握り締め、涙を目にいっぱい溜めて。

 なかなか歩き出さない奈緒を見かね、沢田は引き返してきた。

「泣かないでよ」

「泣いてないし」

 信号はまたしても赤になってしまった。

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