LAST LOVE -最愛の人-
「美人ってなんの話っすか?」

カウンターで日報を書いていた芽依と理子の話に入ってきたのは

莢木翔[サヤキショウ]

学年は芽依達の一つ下で、三年生の二十歳。

拓弥がサッカー部の後輩ということでバイトに連れて来た翔は、人懐っこく、芽依達と年は違うもののすぐに打ち解けた。


「大人の話だよ莢木くん」

「えー俺も大人の美人に超興味あるんですけど結城サン」

「あれ?私達美人が構ってあげてるのにご不満なわけ?」

「……ビジン……東サンはどっちかつうと可愛い系だし、結城サンの場合……喋らなけりゃね…」

遠い目をして息を漏らす翔。それを見て理子はまたけらけらと笑い声をあげた。

「ちょっと理子笑いすぎ!こら逃げるな莢木!!」




昔はこんな風に他愛も無い会話が拓弥とも楽しめたはずなのに。





***





「でも、話聞く限り、彼氏クンは芽依ちゃんのことかなり好きな気がする~」

「嫌われて無いとは思うけどさ…」

理子と歩く駅までの帰り道。


「じゃあ、何が不満なの?」

「別に不満ってわけじゃ無いんだけど…なんか…ほんとにね、やなの。エッチが」

「……エッチの、何が?」

「え…分かんない。もっと、なんか…どう言ったらいいのかな」





少女漫画に出てくるような、幸せで愛に溢れたセックス。
思わず涙が溢れてしまう、幸福の絶頂。
暖かくて、まるで溶けてしまうような――――。





「好きな人と抱き合うのって、すっごい幸せな気持ちになるもんじゃない?」

「そんなのが理想」

「芽依ちゃん愛され過ぎてワガママになってるんだよ絶対」

「…だと思う」

「結局ノロケじゃん!」

「…かな?」

「だよ!絶対そう!も~近いうちに会わせてね、芽依ちゃんの彼氏クン」


胸がズキリと痛んだ。
芽依のことを信頼してくれている理子にまで、拓弥との関係を隠していることに感じる罪悪感。




(一年も隠しといて今更言えるわけないしなぁ…)




(ゴメンね、理子)





理子が拓弥のことを好きだということを知ったのは、拓弥の告白を受け入れた翌日のことだった。
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