メガネの裏はひとりじめⅠ
まぁそんなこと、言うまでもないけどさ。
ジャリッと砂を踏んで、返した踵を恐る恐るまた返す。男の子と対峙していたときの体勢に戻ったあたし。
と。
「おいおい。人の女になに言おうとしてんの〜?」
すぐにグッと誰かの腕に肩を抱かれた。頭上から降ってきたわざとらしく間延びしたバリトンは聞き覚えがある。ふわっと鼻腔を掠めた香水の匂い。
まさか、まさかまさか…!
お願い嘘でありますよーに!!強く強くいるかも分からない神様に願って(もはや懇願)、そろり、そろり。上を見上げた――…。
『!!!』
ああ、やっぱそうなのね。神様は願いを叶えてくれなかったのね。あたしはこの日このとき、今一瞬で絶望の淵に立たされた。
『巳陵壱翔…!』
「よー。昨日ぶりだな、ハニー。」
『…やだ!全身鳥肌!!』
「ちょっとクソチビ。愛する彼氏に向かってなんつーこと言うんだよ。」
酷ぇ彼女だな。
そう付け足してケタケタと喉を鳴らし笑う巳陵壱翔。ただし、目は笑ってはいない。
切れ長の大人っぽい二重の綺麗なエメラルドグリーンの瞳が言っている。次口開いたらシメる、と。…いや。"殺す"かもしれない。