憎悪の視線
 どうやら夢でうなされ、現実に叫んでいたようだった。

 それにしても、どうしてあんな夢……。私を恨んでいる人物が百合子のはずないのに。心の底で、私は百合子を疑っていたというの? まさか……百合子とは会社に同期入社した時から大の仲良し。喧嘩をしたことは一度もないし、そんなのあり得ないわ。

 典男に促され、車から降りると、そこはガイドブックで見た通りの黄金岬だった。下を見れば真っ青な海で足が竦むけれど、太陽に照らされ、海は黄金に輝きを放ち、それは綺麗な景色だった。


「ここに来れて良かったか?」


 典男にそう訊かれ、私が笑顔で振り返ったその時、典男の顔は今まで見たこともないような恐ろしい表情をしていた。口の端を持ち上げ、憎悪に満ちた鋭い目。

 次の瞬間、私の身体は宙を舞う。

 典男に突き飛ばされたのだった。海に落ちる間際、典男の背後に迫る二人の人物を見た。それが私の最後に見た恐ろしい光景となる。

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