キミが居た病院

 黒い手が伸びてきて、カーテンを開けたその瞬間、優香は目を瞑った。

「やだぁっ!!」

 何も見たくなかったが、意識だけは飛ばないように気を保っていた。

「ゆ……」


 父親が――いや、父親の偽者が名前を呼んでいる。

 ここに居たら危ないと判断し、勇気を出してベッドから飛び降りる。


 ――ドスン!

 いくら慣れているベッドでも、目を瞑っていると転げ落ちてしまう。

 思い切って目を開け、扉の方に駆け寄る。


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