揺れる
情景
 あなたがいなくなって、私は虚無を抱いて足を踏み出せなくなった。



 これからどこを目指していいのか、私はどこに向かうべきなのかわからなくなった。



 一歩踏み出そうとした、宙ぶらりんになった足の置場を失くした私は、あなたがつけた足跡にそっと、自分の足を重ねてみた。



 あなたがいた場所に身体を委ねて、あなたが見ていた景色を目に映し、あなたが感じたものを私は感じようとした。



 その欠片を見て感じ得たとき、私は庭の椅子に腰掛け、空を仰いだ。



 どれほどの時間、私はあなたと同じ場所にいたのだろうか。



 私は、一緒にいたからなのか、いつもあなたと同じものを見て、同じように感じていると思っていた。



 でも違っていた。
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