揺れる
 あなたに降り注ぐ雨が弱まると、「ありがとう」と言って傘を置き去りにしたまま歩いて消えていった。


 私は凍えてしまいそうな体をかばうように、その傘を拾い上げる。



 また私の差した傘は置き去りされてしまった。




 あなたが消えると雨が降る。          


 その雨は容赦なく私に降り注ぐ。



 私はそんな雨の中、あなたの面影を追うように、ゆっくりと足を踏み出す。



 いつかあなたにまた出会うことを祈って。



 いつかあなたがこの傘を持っていってくれることを祈って。



 私は一人、雨の中を歩き続ける。




―おわり―
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