揺れる
 幾つものあるあなたの足跡の先は、どれも私がいた方に向いていた。



 あなたがつけた足跡に自分の足を重ねるたびに、あなたが見ていた私の姿が目に浮かぶ。



 私はあなたを見ていたようで、しっかり見てはいなかった。



 そんな私を見てどう感じ、何を思っていたのか。



 今はもう、あなたに訊くことは叶わない。



 どうして消えてしまったのか。どうして私の傍に来てくれたのか。



 それすらも、私は知ることは叶わない。



 覚えているのは、いつだってあなたは笑っていてくれたこと。



 忘れられないのは、あなたが消えてしまうときに見せてくれた、涙を流しながら浮かべた最後の笑顔。
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